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2014年8月

2014年8月17日 (日)

HERO

どうもKです
4連休もあったので普段出来ない事をブチかまそうと思って、頭の中で暖めていた話をテキストに起こしました
ヒーローを引退した人のお話です
小説というよりかはプロットみたいなものですが良かったらどうぞ








―HERO―
「今日は我々人類が自由と平和を勝ち取った記念日です」

街頭のビジョンに映ったニュースキャスターが躓く事無く淡々とした口調で告げる

「数々のヒーロー達の手によって悪の組織は壊滅し、あの忌まわしい大戦が終結してから
丁度5年になります。都市の中心部では例年通り記念パレードが行われる予定で…」

馴染み、浸透し切った平和を謳う言葉は誰からも拾われずにざわめきの中をすり抜けていくようだった

ただ、一人を除いて――


「人類が自由と平和を勝ち取った記念日だって謳うのはいンですけどねぇ…」
仕事が一段落し、なんとなく点けた休憩室のテレビに意識を引っ掛けて本日限定の綺麗事
と現実との溝を皮肉るように若者はごちた

「例の通り魔事件、まだ犯人は捕まってないようだねぇ…犠牲者は増える一方だよ。また昨
日、都市部の外れの人間が殺されたらしい」

若者よりふた周り程年上の年配の男がそれに乗っかる

「テレビではあまり詳しくは報道されていないけどさ、遺体を見る限りどうやら人間業じゃない惨い殺され方をされているらしいんだ…場所はまちまちとは言え都市部からは離れない
だろ?私も最近不安で不安で夜も眠れないような有様…」

「大丈夫ですよ、部長―」

不安にかられる年配の男の声を若者は遮る

「いざとなったらヒーローが駆けつけれてくれますよ」


「こうして顔を合わせるのは大戦以来だな、〝ブルー〟」

職場を離れた若者はテレビに噛み付いていた先ほどとは打って変わった雰囲気を纏っていた

「…元気そうだな。〝レッド〟」

ブルーと呼ばれた若者と同じ位の年齢の男が張り詰めた表情を浮かべながら返す

彼等は大戦時に共に闘った仲間同士だが、互いの本名は明かさずに色で識別されたコードネームで呼び合う仲だった

「君がわざわざこうして現れた意味だけど、もう大体、何となくは分っているんだ」

「相変わらず話が早くて助かるぜ、リーダー」

一呼吸おいてからブルーが切り出す

「近頃巷を賑わしてる例の通り魔事件の事だがな。年齢、居住区、性別、被害者の特徴はどれを取っても一見バラバラなんだが――ある、一定の法則に基づいて殺害されている」

「――敵の狙いは、やはり俺達か」

レッドが重たく放った言葉をブルーは無言で受ける

「根絶やしにした筈の連中の残滓と見ていいだろうな…そういや〝ピンク〟の奴は元気にしてるのか?」

「ああ、仲良くやってる。でもこんな事になっちまったら、家族で呑気に記念パレードなんか
に行ってる場合じゃないな」

「まあ、待てよ。俺は警告に来ただけだ。家庭に入ったお前らの手は煩わせないように動いてみるつもりだ」

「ありがとう〝ブルー〟」

一通りの話が済むと、ブルーは背を向けて、雑踏の中へと紛れていった

「――あれから丁度五年だ。探したぜ」

ささくれたマフラーをはためかせ、全身黒ずくめの長髪の男が後ろから突き刺すように言った

「…何者だ?」

コードネーム〝ブルー〟の男は動揺する事無く返す

「クククッ…昔のよしみでそう聞かれたら応えてやりてぇんだがな、細けえ事はもう忘れちまってね。覚えているのは…むせ返るような手前ェらの臭いだけさ」

「我々の仲間を殺して回っていたのはやはり貴様だったか。大戦の遺物が…あと腐れが無いよう綺麗に消し去ってやる」

張り詰めた空気が辺りに広がる。戦いに特化する為、お互いの身体が激しく軋み、歪み、
蠢く、そして放たれる言葉一つ――

「変身ッ…!!」



(〝ブルー〟はああは言ってくれたが、いざとなったら僕が家族を守らなければ―)

レッドは最悪の事態を想定しながら、自宅へと足を向けていた

突如メッセージの受信音が鳴りレッドの思考を遮った

「…ん、〝ブルー〟から?」

【奴と遭った。お前の助けが欲しい、場所は―】

冷たい感覚が背を走る前に熱いモノが身体全体に駆け巡った

「何だと…?〝ブルー〟…待ってろ!今助けに行くからな!」

レッドは来た道を戻り、指定された場所へと駆けて行く――

「ブッ…ブルーッ!?」

辿り着いた先には傷を受けてうなだれている戦友の姿があった

「お前達にも仲間を助けに来る情くらいはあるってワケか…」

何度も合見え、良く聞き慣れた男の声が響いた

「…お前か」

「人類の自由と平和の為に地獄の淵から蘇って来てやったぜ」

薄汚れた長髪の男は皮肉を口に乗せたまま上着を捲くった

「〝対怪人機構〟の作り出した化け物め―」

ピシッと〝レッド〟の身体に無数のヒビが入り、割れた。その下からは赤い甲殻で包まれ
た身体が覗く…

「その言葉は手前ェにそのまま返すぜ…〝レッドシザース〟」

男の腰に巻き付いたベルトの風車が回り、瞬く間に男の身体を飛蝗の姿へと変貌させていく。その姿は何処かアンバランスで所々にノイズが入り混じったような姿だった

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――勝負は一瞬で着いた

「さて、と…あと数秒で〝ブルーシャーク〟と同じ所に逝けるぜ。ああ、〝ピンクトード〟もしっかり連れてってやるから寂しくねえだろ?」

流暢な口調で男は続ける

 「しかし、世界征服を実行する為にヒーローを勝った事にして裏で実権を握るとは良く考
えたもんだ。おかげで寝覚めは最悪だったぜ」

「…まさか、目の前で仲間を殺し、その上で完全に八つ裂きにしたお前が再び僕の目の前に現れるとは思わなかったよ」

今にも事切れそうな声でレッドシザースは言葉を浮かべた

「俺の体内に埋め込まれた対怪人機構は一度バラバラになった肉体を再生し、どんどん強大になっていくお前達の力に感応し、肉体の限界を超えた進化を促し続けたってワケだ―」

「――これから、どうする気だ?もう一度世界を引っくり返してみせるかね?まあ、お前一人の力ではもう、どうにもならんがね…」

レッドシザースに言われるまでも無くそんな事は彼にはもう分っていた。肉体の負荷を超え
た進化で自分自身もそう永くはないという事

そして、対怪人機構が指し示す怪人因子の現存数は既に地球の総人口と――

「この戦い、おそらく我々人類は勝つことは出来ないだろう。ただ、それでも君に望みを託すしかない。人類の自由と平和の為にこの〝対怪人機構〟を受けて君が最後のひとりになっても戦い続けてくれる事を祈る―」

男はヒーローになる前の遠い昔の事を思い出していた――

                                         

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